運動症状

パーキンソン病の姿勢異常とは?

― 種類・原因・予防のポイントを理学療法士が解説 ―

パーキンソン病の姿勢異常とは?

パーキンソン病の姿勢異常とは?

パーキンソン病では、病気の進行とともにさまざまな運動症状が現れることがあります。代表的なものとして、

が挙げられます。

これらの症状が進行すると、歩きにくさだけでなく、立ち上がる・方向を変える・家事をするなど、日常生活のさまざまな場面に影響を及ぼします。

そのため、姿勢異常が目立つようになってから対応するのではなく、早い段階から予防や評価を行うことがとても重要です。

姿勢異常にはどのような種類があるの?

パーキンソン病診療ガイドライン2018では、代表的な姿勢異常として次のようなものが挙げられています。

これらはそれぞれ異なる特徴を持っていますが、実際には複数の姿勢異常が組み合わさって現れることも少なくありません。

なぜ姿勢異常は起こるのでしょうか?

「姿勢が悪くなったから背筋を鍛えれば良い。」そう考えられることがあります。

しかし、パーキンソン病の姿勢異常は、それほど単純ではありません。

『パーキンソン病診療ガイドライン2018』では、姿勢異常の原因として、

など、さまざまな要因が関与するとされています。

つまり、姿勢異常は一つの原因だけで起こるものではなく、複数の要因が重なって生じる症状なのです。

そのため、「この運動をすれば必ず改善する」という万能な方法はありません。実際に同じように身体が傾いて見えても、その背景にある原因は人によって大きく異なります。

私たちも臨床で、「Aさんには効果があった運動が、Bさんには全く効果がなかった。」という場面を数多く経験してきました。

だからこそPDitでは、姿勢そのものを見るのではなく、「なぜ、その姿勢になっているのか」という原因を丁寧に評価することを最も大切にしています。

PDitが考える姿勢異常の原因

パーキンソン病の姿勢異常について調べると、「筋力が弱いから。」「背筋を鍛えましょう。」「ストレッチをしましょう。」といった情報を目にすることがあります。もちろん、それらが必要な方もいます。

しかし、私たちがこれまで多くのパーキンソン病の方と関わる中で感じているのは、「姿勢異常は、一つの原因だけで起こることはほとんどない」ということです。

同じように身体が右へ傾いていても、その原因は人によって大きく異なります。そのためPDitでは、姿勢そのものだけではなく、「なぜその姿勢になっているのか」を明らかにすることを最も大切にしています。

神経系と運動器系、両方の視点が必要です

私たちは、姿勢異常を大きく「神経系」と「運動器系」の2つの視点から評価しています。

神経系の評価

神経系では、病気そのものが姿勢へ与えている影響を確認します。例えば、

などを評価します。

例えば、薬の種類や服薬量が変わったタイミングで姿勢異常が出現することもあります。このような場合は、運動だけで改善を目指すのではなく、まず主治医へ情報提供し、薬剤の調整が必要になることもあります。

実際にPDitへ来られた方の中にも、薬剤変更をきっかけに姿勢異常が出現し、服薬を調整したことで改善したケースがありました。

このように、姿勢異常を評価するときは、身体だけを見るのではなく、病気や治療の経過も含めて考えることが大切です。

運動器系の評価

一方で、運動器系では、「身体がどのように動いているのか」を詳しく評価します。具体的には、

などを確認します。

例えば、股関節が硬くなっていることで前傾姿勢になっている方もいれば、体幹をひねる筋肉の左右差によって身体が傾いている方もいます。一見すると同じ姿勢異常でも、その背景にある原因はまったく異なることがあります。

だからこそ、私たちは運動を始める前に、身体の状態を丁寧に評価することを大切にしています。

原因が違えば、運動も変わります

姿勢異常の原因は人それぞれです。例えば、

この4人は、見た目には同じように身体が傾いているように見えるかもしれません。しかし、原因が違えば、必要な運動も変わります。

例えば、姿勢の感覚がずれている方に、ストレッチだけを続けても改善は難しいでしょう。逆に、筋肉の硬さが原因なのに、感覚練習だけを行っても十分な効果は期待できません。

つまり、「姿勢異常」という結果は同じでも、その原因は一人ひとり異なる。だからこそ、一人ひとりの身体の状態を評価し、その方に合わせた運動を選択することが重要なのです。

姿勢異常はいつから予防すれば良いのでしょうか?

私たちは、診断された早い段階から予防的に運動を始めることをおすすめしています。

「まだ姿勢は曲がっていないから大丈夫。」そう思われる方も多いかもしれません。しかし、パーキンソン病の姿勢異常は、ある日突然現れるものではありません。身体の硬さや左右差、姿勢の感覚のズレなどが少しずつ積み重なり、気が付いた頃には大きな姿勢異常になっていることが少なくありません。

姿勢の変化は、自分では気付きにくいことがあります

パーキンソン病では、症状が左右どちらか一方から始まることが多くあります。そのため、少しずつ身体の使い方に左右差が生まれ、それが積み重なることで姿勢や歩き方が変化していきます。しかし、その変化はゆっくり進むため、自分では気付きにくいことがあります。

実際にPDitへ来られる方からも、

といったお話を伺うことが少なくありません。だからこそ、症状が大きくなる前から、定期的に身体の状態を確認することが大切です。

姿勢異常は、早く対応するほど改善しやすい可能性があります

姿勢異常をそのままにしていると、

など、さまざまな影響が生じることがあります。さらに進行すると、筋肉だけでなく関節そのものが硬くなり、運動だけでは改善が難しくなる場合もあります。

そのため、「もう曲がってしまったから運動を始める」のではなく、「曲がり始める前から予防する」という考え方がとても重要です。

定期的な評価が、将来の姿勢を守ります

姿勢異常を予防するためには、毎日特別な運動をすることだけが大切なのではありません。もっと重要なのは、「今の身体がどのような状態なのか」を定期的に確認することです。例えば、

こうした変化を早い段階で見つけることができれば、その方に合った運動を早期に始めることができます。

「まだ大丈夫」と思っている今だからこそ、自分の身体の状態を知ることが、将来の姿勢や歩行を守る第一歩になると考えています。

まとめ

パーキンソン病の姿勢異常は、「姿勢が悪くなる」という単純な問題ではありません。その背景には、

など、さまざまな要因が関係しています。また、同じように身体が傾いて見えても、その原因は一人ひとり異なります。

だからこそ、「腰曲がりにはこの運動」「身体の傾きにはこのストレッチ」と一つの方法で改善を目指すのではなく、その方の身体の状態を丁寧に評価し、原因に合わせた運動を行うことが大切です。

また、姿勢異常は進行してから対応するよりも、早い段階から身体の変化に気付き、予防的に取り組むことが重要です。

そんな小さな変化でも、早めに評価を受けることで改善につながる可能性があります。気になる症状がある方は、一人で悩まず、パーキンソン病のリハビリを専門とする理学療法士・作業療法士へぜひご相談ください。

パーキンソン病の運動療法について詳しくはこちら

小川 順也
この記事の執筆者
小川 順也
株式会社Smile Space 代表取締役 / 理学療法士 / LSVT BIG 認定資格者
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